6/16 麻倉玲一は信頼できない語り手 読了

スルスルと読めたので、まあまあおもしろかったんだろう。

日本最後の死刑囚に、資産家の家を飛び出した食えないライターがルポを書くためにインタビューする話なのだが、終盤とんでもないスピードで思いも寄らぬ展開で幕を閉じるという小説。

時代は近現代で、死刑制度が世界的に廃絶に向かい日本もそれに倣い、死刑囚は終身刑と同様刑務所に入らざるを得なくなり、刑務所も民間が手がける様になっていた。そんな状況でこの死刑囚、題名の麻倉なのだが、孤島にあるさびれたリゾートホテルを改築した刑務所に収監されており、最後の死刑囚ということで、いわゆる絶滅危惧種と同様、囚人ではあるが所員、もちろんこれも民間なのだが、に丁寧に保護されているのである。

だもんだから、自分の自伝を書いてもらいたいことも誰に書いてもらうかも希望が通り、その白羽の矢が当たったのが、前述のライターなのである。選ばれた理由が、最後の死刑囚である麻倉のことを全く知らないこと。

そんな中でインタビューしていくのだが、インタビューと言うか、麻倉自身が自分の犯した殺人を語っていくのをライターが書き写すのであるが、その内容が真実なのか、フィクションなのか見当がもつかず、また、麻倉の物言いが、相手を相当イラつかせ怒らせる。最終的には同席している看守まで怒らせ、その看守は麻倉を殺すために掴みかかっていく始末。

結局、麻倉はその収容所で死刑になって処刑されるのだが、そこから孤島での連続殺人が発生する。ページで言えば残り三分の一。死刑されない制度なのに死刑になったり、処刑されたはずの麻倉が犯人と思わせるような連続殺人が起こったり、とにかく何がなんやら分からず話が進んでいき、読むスピードも速くなって、結末を迎える、十分腑に落ちる内容で。

この本で、麻倉は人殺しをするのはそれなりの理由があり、それはそれで十分エゴの境地ではあるのだが、なぜ人は人を殺してはいけないのかとのやりとりは、うなづけるところもあった。例えば、明らかに世の中の害になる様な人とか、死にたくてしょうがない人を殺してあげる事はいけないことなのだろうか、などと思ってしまう。