4/14 イノセント・デイズ 読了

これも帯の文句で面白そうだと感じ購入。

元恋人の家族を放火で殺害した疑いで逮捕され死刑判決となった女性を中心にして、生まれた時の産科医、小学校時代の親友達、一緒に暮らしていた姉、中学校時代の友達、元恋人、死刑判決後の看守が、この女性の生い立ちや、人間関係や、起こした犯罪や、拘置所での状況を綴っている小説。

死刑判決が決まった後、これらの関係者がその女性はそんな事件を起こす様な人では無い、という事を、それぞれが語っており、これは冤罪なのか、それとも本当に放火したのかというミステリ性や、死刑執行直前の、執行されるか延期されるかというサスペンス性が重なり、後半の読むスピードがアップした。

この女性は、生まれた時から曰く付きで、その事がまだ判断できない小学校の時は親友がいて、とても良い状況であったのが、母親の死を境に急転直下、奈落の底に落ちていき、何のために生きているのか、と苦悩の連続だった。そんな中でもあなたが必要だと言ってくれる人もいて、そんな人には心底傾倒してしまう。例えば、犯罪を犯した友人に対してもその人の為に自分みたいなものが汚れた方が良いと思って行動してしまったり、どれだけDVにあってもその人が自分を必要としているなら堪えられるし、苦にならないとか。

それに加えて、それぞれの登場人物たちも重い過去を背負っており、弁護すると自分が不利になるため女性の死刑判決を覆えす行動ができず苦悩する。

クライマックスはその重責に耐えられなくなった人が、告白し思い切って弁護しようとするのだが時すでに遅く、執行の日が来てしまう。処刑室への移動の時の描写は特に読み応えがあった。状況は少し違うが、ダンサーインザダークを思い出した。

この中で特に興味深かったのは、イジメの構図で、グループ内でイジメられている人は、そのグループ外で自分が優位に立てる友人を作り、その友人との関係でイジメられている事を消化している事。事実そういうことがあるのかどうかはわからないが、この死刑判決受けた女性はそのイジメられている人の心の拠り所としてのみ生きる価値を感じ、要するに負の感情の吹き溜まりの中で生きているのだろう。だから、この女性の心の拠り所は、この負の感情を抱えたまま死んでいくことしかなく、死刑執行までの心情は安らぎでしかなく、騒ぎ喚く事もなく過ごせたのだろう。それでも最後の最後、自分の信念が一瞬緩んだ時の心の葛藤は想像を絶するものがあり、文章にはなっていないが、充分感じ取れた。

とにかく考えさせる小説であった。