1/22  雪の断章 読了

孤児の女の子が養子先で酷い仕打ちを受け家出をし、偶然出会った青年に拾われ、育てられるお話。それもこの女の子が小学校に上がる前から20歳ごろまでの話。

場面が変わる度、女の子が成長していく度、この女の子の心情目線でとても詩的な風景、特に冬、雪の描写が挟まれる。初めの頃はうざったいと思っていたがだんだん慣れてきて、表現の仕方も変化していってるのかなと感じる。

この少女は養女先から家出をするくらい気丈で多感で正直すぎ、考えすぎて自己完結してしまうそんな子ではあるがなぜか青年は頑なに育てていく。その青年だけでなく、青年の親友、この二人は本当に気のおけない仲、もアパートの管理も青年のお手伝いさんもみんなこの少女の成長を助けていく。なぜ、なぜと思いながら読んでいく内に、解説でも書いていたが、少女漫画のキャンディキャンディを思い出した。

それにしても、この少女の心の内と行動力は大人顔負けで、こんなこと実際にはありえないよなんて読んでいたのだが、途中から、反抗期とかの子供の心は表には出せないけどこんな思考がぐるぐる回っているのではないかと思い直した。引きこもりとかも子供であろうが大人であろうが同じような苦しみを持っているのではないかと思った。青年はこの状況をとにかく待つと言う行為で少女の苦しみを緩和させていた。待つと言ってもただ何も考えずに待つのではなく、常にこの女の子のことを考えながらなのでものすごいエネルギーが必要なのではないだろうか。

この小説で面白いのは、少女の成長過程で、ページで言うと中盤ぐらいに、住んでいるアパート内で殺人事件が起きて、その時にアパートでパーティーを開いていた関係者が容疑者になるも、犯人の特定ができないまま最後まで行くところ。パーティーの参加者は、その人的関係も面白く、女の子を育てる青年とその親友、親友と同じ会社の女性、女の子の心の拠り所となる人、と同じ会社の男性社員二人、と殺された女性、同会社の社員でありかつ主人公の女の子を養子に取った時の養子先の娘。当然養子先で虐められていたので主人公の女の子が疑われるのだが、女の子の主観でこの小説が進んでいるので女の子が犯人ではないことはわかる。が、主人公の女の子は、刑事もわからないトリックを早いうちに理解して、自分なりに犯人を特定し気持ちを昇華させつつその人と一緒の時を過ごしていく。この時の心情もまた面白い。本当にその人が犯人かどうかは最後にわかる。

この本を手にしたきっかけは、寝るのも忘れて一気に読んでしまうと背表紙に書いてあったからなのだが、一気には読めなかったが、確かに結末を早く知りたい思いでページをめくっていた。