12/14 罪の轍 読了

裏表紙の内容で購入。800ページ程度の長編でミステリー。

面白かった。読みやすかった。内容がよくわかった。一つ一つ丁寧に描かれていたからでしょう。北海道のバカな青年、教えた事をすぐ忘れてしまう、が騙されて東京に流れ着き、若い頃に覚えた盗っ人を主に生計を立てていたのだが、誘拐事件、殺人の容疑者にされ、追い詰められて行く様を、その青年目線、警察目線、第三者目線で時系列を追って進んでいく小説。誘拐事件や殺人事件の犯人は読んでいてすぐにわかるのだが、その追いかけ方、内容がリアルで面白い。時は昭和35年辺りの話で、オリンピック開催前高度成長の真っ只中。なので、テレビの普及がようやく伸び始め、電話が少しずつ普及し始める、要するに、技術革新に伴って生活様式が変わり始めたそんな時代。加えて、戦後、全体主義から民主主義に変わろうとしていた時代。犯人を特定するための今では考えられないアナログな、まどろっこしい捜査を繰り返し繰り返し、今でも残っている警察組織の縦社会による捜査のやりにくさの中で、少しづつ牙城を崩して行く様は読む速度も早くなった。とは言えその警察も風貌から捜査の方法もヤクザそのもので、ヤクザとの共闘無くして捜査も成り立たないそんな組織。マスメディアの在り方も、変わりつつあり、その対応もまた、今までのやり方ではいかなくなってくる。

この世の中の変わり方、令和の今も同じような感じで、外を歩けば至る所に監視カメラがあり、通信も歩きながらどこでもできる様になり、そう言う意味では犯罪捜査には有利になっているのであるが、それが故のメディアの在り方や、ネット社会の革新で監視カメラの届かない所での犯罪が増え始めている。

これから人間社会はどうなって行くんだろう、そんな事を考えさせられた本だった。

それと、バカな青年。バカになったのには訳があり、その内容を知った上でこの物語をどう解釈するか、これもまた、現代に投げかけている問題なのではないか。