4/10 平場の月 読了

直前に読んだ本は30年ぐらい前に付き合った事のある男女のSNSでのやりとりだったが、今回の本も同じ様な50オーバーの同級生が、郷里でばったり合い、その後の二人の話。前者は、タンパクに会話が進んで、最後にえーって感じで終わるのに対して、この「平場の月」は題名のごとく、本当にのっぺりした郷愁に満ちた展開で、後でどうなるのかわかっているのだけど、最後の最後で涙腺が崩壊すると言う、同じ年代の同じような境遇の男女でもこうも違う物語ができるとは想像もしなかった。前の本では、社会に対して色んな事を考えさせられたが、この本は最初から最後まで、人の情についてくどいぐらいに表現されており、それがために、互いの思いやりに対するもどかしさや、うまくいっている時のなんとも言えぬ幸福感が増幅されて、本当に最後の最後、数行で涙を持っていってしまう。卑怯と言えばそうなのだが、うまいなぁと感じた。

正直な所、解説読んでそうだったのかと思ったのだが、最初に結論ありき、最後にどうなるのか判っていたのだが、全く気づかなかった。途中からどうせ最後はこうなるんだろうなって勝手に先読みして、読了後、ほら見ろって勝ち誇っていたのに、最初から描いてあったとは、なんとも小っ恥ずかしく思ってしまった。小説として特にわかりにくくしてたわけでなく、自分が最初に書いてある事をおぼえていなかっただけなので、なおさらである。

自分もほぼ同年代で、同じような境遇で、田舎にUターンの予定でいるので、少し実感の湧く小説であった。

この本の解説にもあり、以前よりちょっとずつ目に入るようになったので、今回から「完読」はやめて「読了」って書くことにした。