12/22 革命前夜 完読

ベルリンの壁崩壊前に、日本から東ドイツにピアノ留学をした青年の話。日本人は主人公だけで、後は外人、カタカナの個人名ばっかりで、正直、カタカナの人名は苦手で、それだけで内容が入って来ない感じ。ギリシャ神話が良い例で、オリエント急行殺人事件ですら、何度読んでも何度観ても、その関係が未だによくわからない。

加えて登場人物だけでなく、ピアノでの留学生の話なので、バッハとかシューベルトとかの人名に加えて、曲名やら、ソナタだとかいった専門用語もカタカナなので、とっつきにくい本だった。
が、が、しかしである。クラッシックなど解せない自分であるにも関わらず、音楽ってこういう聞き方、この小説内では読み方とも表現しているが、をするもんなんだ、音の中から、感情だけだなく、人生やら社会観やら、その時の情景やら、が盛り込まれいる物なんだと言う事がわかり、そこに書かれている曲を無性に聞きたくなった。それだけ、曲に対しての表現が素晴らしかった。クラッシックを音無しの文字だけでここまで表現できるなんて、凄い作家だと思った。多分、少しでも出てくる曲を聴いていれば、この小説は格段に面白かっただろうと思う。
音楽の事だけでなく、当時の東ドイツの在り方や、在住の人の思いなども、全く知ろうともしなかった事が、一人の青年を通じて、朧げながらわかってくると言うのも、文章力の凄さだと思う。
主要な登場人物は、ピアノやらバイオリンの超エリートで、エリートだからこその苦悩、葛藤、協調、感動、があり、人としては丸々肯定出来ないけど、奏でる音が素晴らしく、その狭間での迷いがあったりする様も、わかりやすく描かれている。その上で、西に憧れを持って移住とか亡命と言う考えや、国内で変革を起こしてより良き国を造ろうとする考えが交錯し、混沌とした東側の国民達の事も、よくわかった。東の指導者達は当然西に対しては対抗心があり、そんな状況下では、密告する人が、当たり前の様に存在し、密告する者とされる者の人間模様なども克明に描かれている。
後半は、そんな中で傷害事件が起き、誰が犯人なのかと言うミステリーの要素も加わって、さらに話が深まり、最後には意外な結末が待っている。
従ってこの小説は、音楽、社会、国の在り方、ミステリーといろんな要素が絡まって、物凄く為になり、かつ考えさせられ、ワクワクした本であった。