1/10 43回の殺意 完読

川崎が舞台だったので購入。数ページ読んだところで、5年前の実際にあった事件のルポだと言うことに気づいた。その当時、少しは衝撃だったが、すっかり忘れいた事件。今、読み返してみると、衝撃どころでなく、物凄く考えさせられた。

中一の少年が、仲間だと思っていた先輩達に、殺害された、しかもカッターナイフで43回も切られて、その間、2度も2月の極寒の多摩川で泳がせて、何回か護岸壁に頭をぶつけられて、その後加害者の先輩達がいなくなった後もまだ息があり、2〜30メートル程、這って行って事切れているのだ。
この痛ましい事件のルポで、おそらく事実であろう状況を説明した上で、被害者と加害者の家庭環境や、それぞれの立場の思いなどが記されている本。
被害者の父親が最後にインタビューに答えた内容は、涙を流しながら読んだ。喫茶店で。
犯人は少年であれ、自分の息子を殺したのである。その犯人は、実刑となって、刑務所で税金を使って、3食食べられ、かなり厳しい制約はあるにせよ、普通に過ごせており、少年という事で、将来に向けての教育やら保護やらが約束されている反面、被害者自身は生きる事も許されず、その家族においては、何の補償もないまま、ただ息子が居なくなり、その寂しさ、悔しさ、怒りをどこにもぶつけられない状況で一生を過ごさなければならない。日本の司法制度は本当にこれで良いのかと本気で思ってしまった。
被害者、加害者両者とも、家庭環境に問題ありと一言では済まされない重いものがあると思う。
この事件の予備軍は、何処にでもある様な気がする。
被害者の父親の発言で、誰が悪いのではない、ただただ自分の息子に運がなかっただけだ、とあったが、そこに行き着くには、相当の苦悩をした事だろうと思う。その苦悩は想像を絶するものだと思う。
罪の声では、加害者の身内の苦悩を教えられたけど、当たり前だけど、被害者の身内の苦悩は計り知れない物があると思う。
加害者の刑の軽かった人は早くて今年出所となる様である。