12/23 未来 完読

私としては60点かな。それでも電車の中で3回は泣いた。それも涙を流しながら。一度はこれ以上電車の中で読めんと本を閉じるくらい。

題名が「未来」で裏表紙に数十年後の未来からの手紙が届くと書いてあったので、東野さんの「時生」の様なものかと思っていたのだが、大番狂わせ。ちょっとでも内容を書くとネタバレ必至なので書きにくいのだが、とんでもなく重い内容で読み応えは充分、「告白」を思い出した。子どもたちが受ける有りとあらゆる被害、ヤングケアラーに始まり、性的虐待、暴力的虐待、貧困による不十分な教育、等。これでもかという位、連発されてくる。少年少女がそれでも立ちあがろうとしても、次から次へと降ってくる。耐えられなくなって自ら命を落とすものもいる。これらについての問題を投げかけているのだが、文章力が優れているだけに、余りに小説的で、こんなことは現実離れしているとしか思えないのが減点理由。最後にあとがきで、そのことをフォローする様に、小説ではなく事実身の回りに起きていることで、少しでも気にして欲しいとは書いてあったが。偉そうな事を言うようだが、これらの問題を訴えたいのならもうちょっと工夫が欲しかった。

疑問なのが、各章の題名。「序章」「章子」「エピソード」「エピソード」「エピソード」「終章」となっており、「章子」はそのまま章子の話で「E1」はその同級生の亜里沙の話、「E2」は彼女らの先生の話、「E3」は章子の父の少年時代の話なのだが、なぜ「章子」だけこの名前を章の名称に使ったのか、どうしても解せない。湊さんに教えて欲しいところである。

どの章も、夢の国であるテーマパークが絡んでおり、行きたくても行けない場所がテーマパーク=平穏な未来と言う事だろうか。

未来からの手紙は少女たちを救ったのだろうか、夢の国で解決したのだろうか、とか、先生はなぜ2人だけに手紙を送ったのだろうとか、まだまだ疑問はあり、腑に落ちないところ満載である。

読み終えてみると、被害に遭っている子供たちは、どこにも相談できず一人で抱えてしまって、悪循環を起こしている事がわかる。子供側から考えると、大人には抵抗できないし、ましてや自分の親が加害者だとかだと、尚更表に出してはいけないという考えに至るのだろう。徐々に、この様な事が表に出てきている現代ではあるが、まだまだ、ぬかるみに入っている子供たちは沢山居るのだろう。改めて自分も少しでも力になれればと考えさせられた。

そう言う意味ではやっぱり100点なんだろう。