9/21 正欲 読了

今世間で話題になっているLGBTQや多様性とかをもろに考えさせる小説だった。

冒頭で、哲学が語られる、吊り広告やら街の宣伝看板は突き詰めれば「明日生きるため」に存在する物って事が語られる。次の段落では、いきなり児童ポルノで捕まった3名の男達の報道記事が綴られる。その後からは3人の主役達が代わるがわる描かれるのであるが、その題名に、主役達の名前と平成から令和に変わった201951日を境に「後何日」または「から何日」と表記される。そして最後の章だけ名前だけで日にちの記載がない。絶対なんか意味があると思ったのだが、全く関係なかった。または私が気づかなかった。解説にも何も書いてなかったので思い過ごしだった。

3人の主役は小学校不登校の子供を持つ検事、水の動きにしか性的興奮をもたない女性、高校の時に兄の部屋にあったAVビデオを目撃し男性不審と言うか男性恐怖症となった女子大生。

この3人の行動と心情が代わるがわる記述され、児童ポルノで捕まった犯人達と徐々に絡んでいき、最後はモヤっとした終わり方なんだけど、物凄く考えさせられた。

多様性という言葉で、いろんな考え方の人を受け入れようって言ってるけど、ほんの少数のこのいろんな考えの人からも外れる人もいて、この人達はその事を隠して人に知られないように生きて行くしかなく、その辛さたるや、生きてる価値が無いとも思ってしまう。助けになるのは同じ考えを持っている人だけなんだけど、なかなか出会う事ができない。この小説では、出会えてそのコミュニティを作っていく最中で、ちょっとした事から児童ポルノで検挙されるのであるが、捕まっところで、自分の性癖がある故に、動機を聞かれても理解してもらえないので黙秘するしかない。

私などはここに出てくる様な性癖はほとんど理解できず本当にいるの?って思うのだが、もし周りにいたら、自覚なしに傷つけていたかも知れないと思うと、いたたまれない気になる。

題名の「正欲」って凄いと思った。