9/27 傲慢と善良 読了

恋愛小説というか婚活小説で、30前後の年齢で結婚に焦っている男女の心境、感情を物凄く克明に書かれた小説。人がの気持ちを読みやすく詳細に書いたらとても読みやすく、理解しやすくダメ出ししやすく、どんどん胸に落ちていき、その都度、何でそう考えるのとか、そんなことないよとか、ひてーとか、これは良くわかるとか、そうだそうだとか、とにかく感情移入しやすい小説で、読みやすく、面白かった。しかも、最初は失踪事件の捜査なので、ミステリアスで、真相を早く知りたくで読むテンポも速くなった。

物語は前半と後半、男性側の視点と女性側の視点に分かれていて、冒頭、折角結婚直前まできていながら、女性が失踪。事故か誘拐か、まさかの心変わりか、以前にストーカーの話もきい書いており、それが過去に婚活中にふった男性かもと言う情報もあり、犯罪色濃厚な状況で、男性がその真相を探っていく。ここで面白いのが前半の終了には真相がわかるのだが、主題は結婚に対する、特に結婚に焦っている男女の深層が事細かく書いてあり、そこには頷く事も多々あった。ほぼ哲学。この男性は20代の頃は女友達が多く、女性に全く困らない日々を送って来たのに、いざ結婚を前提とした付き合いをする女性を選ぶときの感覚は全く異なり、何処かで妥協してしている自分がいる。こんな事、当たり前じゃんと思っていたのだが、妥協ってなんだよ、それこそ傲慢なんじゃないのって書いてあって、確かに自分だって妥協される側なんだという理解がないからだと深く納得した。

後半は女性側の心情と行動。こちらは、男性と全く正反対の人で善良を絵に描いたように生きてきた。この善良と言う言葉が意味深く、善良で居る最も簡単な方法、我を殺す事、とにかく人の意見を尊重して、決定をそこに求めていれば、良い人に感じるが、ずっとその状態だと、自分で何も決められ無くなってしまい、他人依存症と言うのか、全て人に委ねてしまう人生になってしまう。こういった過去のことも含めて、失踪後の状況が綴られていく。詳しく書くと、ネタバレになるので書けないが、なんだか腹立たしく、モヤモヤして後半は進んでいった感がある。

とにかく、おそまきながらの婚活の難しさを改めて知った。ちょっと考えればわかることが、自分中心になって、良かれと思って気遣っていることが、傲慢につながったりする、多分普通にすると思う。相手に合わせようと必死になっても、心の中では合わせてあげているという少し高みに自分を置いているんじゃないかとか、考えようによってはその通りだと思う。

身近なことの深掘りだから話はよくわかったし、意外性もあったりで、面白かった。