9/3 舞台 ピピン 観劇

エンターテイメントの粋を集めた様な舞台。素晴らしかった。ブラボー。

歌あり踊りあり、これだけだと多分宝塚には勝てないかもしれないが、内容が内容だけに、サーカスのパフォーマンスや大道芸やらこれでもかと言うぐらい、惜しみもなく、逆に、舞台のあちこちで同時進行するものだから、全部見ることができないくらい、連発し、そのなかで主役たちが動き回って芝居を展開していく、凄い。

サーカスの一座が、皇帝の息子の成長過程とその行き着く先を、我々客に伝えると言う内容。

だから、サーカスの一座はコロスとして、役者であり、転換要員であり、コーラスであり、主役であり、客いじりも普通にやる、舞台狭しと物語と並行して動き回る、それがストーリーも、主役たちも邪魔しない、おそらく物凄い稽古をこなしたのだろうと思う。

それと全員体のキレが良い。宝塚は極限までの完璧な美しさを求めている感じだが、このピピンの役者達は自然な美しさ、失敗しても屁でも無い、生きてるってこう言うことだろって感じ。決して真似できないのだが、自然とその世界に浸透させてくれる美しさがあった。

中でもビックリしたのは、中尾ミエさん。調べると、76歳。いうなれば、お婆ちゃんなのだが、見事なパフォーマンス、サーカスで良く見る、ブランコ芸。ブランコに座って4mぐらいの高さまで上がり、そこで手や足だけでぶら下がったり、落ちそうなパフォーマンスを見せたりするやつ。76歳でレオタードの衣装を着て、4mの高さまで上がるだけでも普通ではできない事だと思っていたのだが、何と、ただのけぞるだけでなく、補佐はあるものの、手だけ、足だけでぶら下がったり、パートナーの腕だけにぶら下がったりとか、とんでもない技を披露、しかも、メインで歌を歌いながら。顔色も変えず。すげ〜。本気で感動した。デビィ夫人もすごいと思うが、高齢者パワー‼︎リスペクト。

物語も、前述の通り、ある帝国の皇帝の息子の自分探しの話しで、戦に行ったり、女に溺れたり、色んなことをするも、しっくりこない、行き着く先は普通の生活って事なのだが、ベトナム戦争や、今のロシアの侵攻を思い出させたり、ニートの生活を醸し出したりと、結構社会問題を影に隠した舞台だと思った。

ざんねんだったのが、ここから先はネタバレなのでご注意、この舞台の謳い文句、忘れられないクライマックス。先にも書いたが、主人公ピピンは最終的に普通の生活を求めていたものと判断して受け入れるのだが、サーカス一座はそうは問屋が卸さない、燃え盛る炎の中に飛び込んで更なる新しい真の世界を目指すのだ、とビビンを挑発、さて、ピピンはどうするのか、忘れられないクライマックス、普通なら飛び込むよね、普通なら。自分だけでなく、お客さん全員期待したと思うのだが、飛び込まないんでヤンの。それを見たサーカス一座は、大道具、小道具撤収、照明も落として、テントをたたみ、公演中止で、全員退場。それでもお客さんは何が起こるか期待するよねぇ、普通。なのになのに、カーテンコールになるでは無いか。なんコレ!って感じのオーラスだった。ミス・サイゴンもオーラスは主役が自殺して終わりって重苦しいラストだったが、ピピンも消化不良の内に膜が降りてしまった。そういう意味では、忘れられないクライマックスなんだけど。

レミゼの様に、主役が死んでも、大コーラスで終わってほしかった。そういう意味では、レミゼは最高。