1/9 人 完読

なんだこりゃ、って感じの小説ではあったが、ほんわりと心に残ったものであった。

東京で大学生活を送っている青年が、母親の死をきっかけに、大学をやめ、働きだしたお惣菜屋で出会う人達との交流で、少しづつ成長していく様な小説。

この主人公はその数年前に父親も亡くしており、天涯孤独の身になり、奨学金というすべはあるものの、所詮は借金である為、仕方なくの退学。その状態で、手元に55円しかなく、商店街をふらふらと歩いているところで、惣菜屋のコロッケに目がいき、大将にまけてもらい、その流れでそこで働かせてもらうことに。

お店は、大将夫婦と、パートのお母さんと、アルバイトの青年がおり、彼らとの何気ないやりとりや、辞めた大学での友達とのやりとりとか、親戚のたかりとか、父親の若かりし頃の追跡とか、ホントに取り止めのないストーリー。ただ、解説に書いてあったので成程と思ったのは、全ての登場人物を丁寧に紹介している事。特に名前。まずはカタカナで表記してそのあと漢字で表したりして、とにかく人を大事にしていることは理解できた。

それと、気に入った言葉、「人材は代わりはいるけど、人は代わりがいない」。

これこそ「その通り」と心でうなってしまった。主人公は20前後なのだが、この歳でこんなことが言えるのは、すげえと感じた。

完読後、晩御飯のおかずをハムカツとコロッケにしたのは、かなり影響されたと言うことかも。