10/20 Aではない君と 完読

息子が人を殺すと言う犯罪を犯した。その少年は、頑なに真実を隠す。この本はそんな息子の父親が主人公で、その真実を追求する為に苦悩し奔走し成長するもの。真実がわからないがために、まずは息子がそんな事をするはずは無いと盲信する。証拠物件が明確で殺人を犯したことが濃厚になっても、それでも息子は喋らない、なぜ殺人を、と苦悩する。自分は社会的に地位もあり、離婚こそしたものの、その後の元妻との関係や、元妻のもとで生活をしていた息子ともそれなりに良好な関係だと思っていた。そんな矢先で有る。

最終的には真実がわかるのだが、結構考えさせられる内容であった。

犯人、被害者本人たちは当然であるが、その親や親族、友人の苦悩も計り知れないものがあり、その事を題材とした小説が多くなってきている気がするのは自分だけか。例えば「罪の声」とか。

川崎の少年殺害の本にもあったが、加害者となった少年は少年院等に入って厳しいであろうが教育を受け、世間から隔離という形ではあるが守られながら、成長できるのに、殺された被害者は、そこからなんの成長も変化も無いので、被害者遺族の憤りは、凄まじいものだと思う。

この本では、被害者側の感情はあまり書かれていないが、最後の数ページにその憤りが凝縮されているように思う。

逮捕から裁判に至る経緯、弁護士とのやりとりなど、かなり詳しく書かれていて、正直理解はできていないが、その複雑さや、会話すらなかなか成り立たない等がよくわかった。よほど調査しないとこれだけ書けないであろう。凄い。

息子が頑なに喋らなかった理由はわかったが、ちょっと薄い気がした。それだけでそこまで頑なになれるのだろうかと感じた。それと喋り出すきっかけももう一つの様な気がした。

話の流れ的には、なんで喋らないのかとか、喋らないなりにも、真実を知りたいために父親が些細なことも調べていくあたりは、推理ものを読んでる様な感もあり面白かった。

気になったのが、少年達の名前で、被害者は君付けしているのにその友達は呼び捨てにしてる所があり違和感を感じた。何か意図があったのだろうか。

もし自分がそんな立場になったら、この主人公の様な振る舞いができるだろうかと考えさせられた。