8/26 キネマの神様 完読

モーレツに感動した。電車内で涙と鼻水ダラダラ流してしまい、周りの人は笑っていただろう。

先々週、会社の先輩に映画のキネマの神様観にいかないかと誘われたのだが、体調も芳しく無かったので断ってしまった。その後、何気に本屋さんを覗いてみたら、なんと原田マハさん棚の所に同じ題名の本があり、エッ、原田マハさんの作品だったんだ、と気付いた時にはレジに並んでいた。

映画の話では有るが、基本は言葉のやり取りの話で、本日はお日柄もよくのスピーチライターを思わせる内容であった。映画が人を魅了することがこの本ではこれでもかと言うぐらい描かれているのだが、それを伝える言葉、文章が長けてないとつたわるものもつたわらなかったと思うし、マハさんの文章力だからこそこの小説は感動の上にもう一つの感動が積み重なるのだろう。名画座に映画を観に行った時の館内の情景やそれから沸き起こる感情は、自分では今まで感じたことがなかったが、こう言う感じで感じるものなんだ、とスッと理解でき、今度行ったらまた感覚が違ってくるのだろう。

さて、その内容であるが、マンションの管理人を生業にしている老夫婦と一流会社の課長と言う地位を棒に振った娘の家族が中心で進んでいく。老夫婦の夫が大のギャンブル好きで、宵越しの金は持たんと言う人で、それ以上にいろんな所に借金をしていてその事を悪びれもしないようなお爺ちゃん。娘は会社を辞めてしまってお父さんの借金返済もままならず母と一緒に途方に暮れ、何とか父親改造を画策していた。そのお爺ちゃんは、ギャンブルと同じぐらい映画が大好きで、ネットカフェで家にも帰らず映画鑑賞するぐらい。ある時、娘が、帰ってこない父を探してネットカフェに迎えに行った時ひょんなことからブログというものを父に教え、加えてひょんなことから、お爺ちゃんは娘が書いた映画の評論のメモを見つけ、教えてもらったブログへ投稿してしまった。ここから話が急展開。そのブログを見た、老舗ではあるが傾きかけた映画雑誌会社の社長兼編集長が娘をオファー。書き込んだブログの管理人がその編集長の引きこもりの息子で、その息子は娘の評論よりもその前に綴ったお爺ちゃんの文章を絶賛。それでもってお爺ちゃんの映画評論のブログが立ち上がった。そのブログの名前が、シネマの神様。

ある日、お爺ちゃんの書いたブログにほぼ同じぐらいだろう人から反論と言うか攻撃的なブログが書き込まれた。そこからその人とお爺ちゃんの映画についてのやりとりが続き、これがフォロワーに大絶賛。傾きかけた雑誌会社も大繁盛。そのブログのやり取りが面白く、物語上の人物だけではなく、読んでいる読者まで興味を惹かれる内容なのである。最後の方の、お爺ちゃんの相手をした人が明らかになるくだりで、その出し方がまたひと工夫されていて、見開きの最後の行に「さてその人とは!」と書いてありページをめくると直ぐその正体がわかる仕掛けになっているのだが、知りたいけど、知りたくないと言う気持ちがふつふつと湧いているので、ページをめくるのをものすごく躊躇してしまった。こんな思いは初めてだった。その相手が誰なのか、わかった後、お爺ちゃんとその人の関係はどうなって行くのか、家族は、お爺ちゃんの大事にしていた名画座は、雑誌会社の将来は、など、盛り沢山な展開と結末がこれでもかと残り3分の1のページで駆け抜けていく。ハッピーな展開で涙し、残念な気持ちで涙し、オーラスで涙し、感動のオンパレードであった。とにかく私にはピシッとハマってしまった。

お爺ちゃんがずっと書き続けている映画の感想と同じような感じで、今、自分も読書に変えて4年間、年間約40冊の感想をこうしてブログに上げていることもシンクロして感動を増長しているのかも。

今、映画が公開中なのでこれは観に行かないと、と思っているのだが、ネットとかであらすじを見ると、内容がかなり違っているので、どうしようかと迷っている所。まぁ映画館の話でもあるし、観ないと始まらない感じもするし、きっと観に行くんだろうなぁ。