12/16 奇跡の人 読了

久しぶりの原田マハさん。奇跡の人ってヘレンケラーだよな、マハさんだったらどう描くんだろうと思って購入。それにヘレンケラーって言っても三重苦をサリバン先生と一緒に克服した人ぐらいしか知らなかったので読んでみようと思った。

が、しかし、出だしから青森の奥深くに役人が訪問する所から始まるではないか。ヘレンケラーって晩年青森に居たの?と思いながら読み進めると、目の不自由な瞽女さんが登場し、過去を振り返ると言う内容。アレ?ヘレンケラーじゃない、別の三重苦の人の話なんだと判断して最後まで読んだ。

明治の初期、元々眼の病で弱視の女性が、青森の名士の娘、この少女が三重苦なのだが、の家庭教師として赴任し、親の思いや土地の風習とかの逆風に抗いながら、娘を教育して行く物語。この教師となる女性は幼い頃親の意向でアメリカ留学し成人になるまでアメリカで先進の教育を受けており、当時の日本では考えられない自由や男女平等やら叩き込まれて帰国し、日本で最先端の教育を進める事に意欲を沸かす人。

ところか、当時の日本はまだ先進国の仲間にも入れない、旧態然とした考え方が主流で、若い女性、しかも目が不自由な人の発言なんて一笑に付されておしまい、と言う時代。大きくは時代にも抗いながら理想を追求していく様は凄いと思った。

簡単に言えば、三重苦の少女を教育している女性の苦悩を描いていると言う事だが、マハさんの文のおかげで、獣の様な子供のほんの些細な成長で、読んでいるこっちも感動して自然に涙が出、少女に初めてできる友達との別れも、なんとも言えない腹立たしさと感動で涙を流し、オーラスの友達との再会はこう描いているだけで涙が込み上げてくる、と言うくらい感動した。

実在したヘレンケラーとサリバンも同じ様な苦労をして乗り越えたんだろうな、と感じながら解説を読むと!何のことはないヘレンケラーの実話を題材にした日本版フィクションだそうだ。そう振り返れば、独特の苗字ですぐにそれとわかるはずなのに、全くわからなかった。登場人物の名前は結構気にする方なのに、気付かなかった自分に情けない。手塚治虫の漫画でさんざん読んでたのに。

マハさん凄いところは、単に教育の事を描いているだけでなく、当時の日本の古い風習や、性差別、人種差別、福田村事件の様な穢多非人の身分の差別とか、考えてみなよって言っているところだと思う。

とにかく感動した。