4/3 高校事変Ⅻ 完読

もうジェットコースター。本、丸ごと一冊、結衣と架禱斗のバトル。二転三転、いや四転、どころか、振り出しに戻るみたいな、二人のバトルを軸とした、今までの11冊の総まとめの様なな感じで、それなのに、ご都合主義でない所、凄い。正直、過去にいろんなことがありすぎて、改めて読まないと思い出せない所が多々あるのだが、全てが腑に落ち、オーラスでは、ボロボロ泣いていた。最後の方でこれ誰?だ感じた人も居るのだが、全くマイナスにはならなかった。 実は、Ⅻを読み始めてすぐ、えっこんな展開だったっけ、と思うぐらい前巻を覚えておらず、最後の方だけ読み返そうとⅪを開いたのだが、結局、最初から最後まで読んで、そのままⅫに突入した。なので、2冊分がジェットコースターだった。 ただ単に格闘と言うかもう戦争なんだが、その中でも、現在の社会に対しての揶揄や、絶望を抱いている人達への諦めるなと言うメッセージとか、要所要所に込められていて、その思いが一点に絞られ凝縮され、かつそこからの解放を引き出しているので感情が揺さぶられるのだと思う。一巻目を書いた時から、このラストを描いていたのだろうと思うが、あらためて凄いと感じた。逆に描いてなかったのに、後でここまでまとめたのならさらに凄い。 ただ、今回特に思ったのが、「一瞬」とか「瞬間」とかと言う言葉と「選択性注意」と言う言葉が特に目立って、ちょっとご都合っぽかったかなぁ。それでも面白かったのは言うまでもないのだが。 驚いたのが、最後まで読み終えた後、巻末の広告をめくった時に、なんと、13(アラビア数字が出てこない)が出るとの事!「パズルピースか新展開か」なんて書いてある。まだ続くのかとワクワクのアドレナリンが放出した。 加えて、松岡さんを読み尽くした人は周知のこととは思うが、先に書いたこれ誰?がシリーズ物で出ているではないか!本編の中で、キッチリ宣伝も兼ねて、私みたいな松岡さん初心者の興味もひいているとは、恐れ入りました。 「高校事変」2019年から約3年に渡り読み続け、この間に世の中は総理が2回代わり、ロシアが侵攻を始め、コロナで世界が震撼し、ある意味一つになり、そんな中でもオリンピックは2度開催されのとか世界規模でいろんなことが起こり、個人的には離婚があり白血病があったりで、高校事変と共に紆余曲折したような気がする。

3/27 十角館の殺人 完読

久しぶりの推理小説3/20に夏物語を完読し、3/25に高校事変多分最終巻が発売されるので、その間に読み切れる本を選んだつもりであったが、少々オーバーしてしまった。

後の解説で知ったのだが、この小説は20年前に書かれた本格推理小説なんだそうだ。そう言われてみれば、登場人物達の物言いが、なんだか芝居じみていて、なんか狙いがあってこんな口調にしているのかと最後まで感じていた。加えて気になったのが、主な登場人物は大学生なのだが、ほとんどが喫煙者でタバコを吸う場面の多い事。よくよく考えてみれば、自分が小さい頃は電車の中も喫煙できてた時代だったから充分頷ける。

本格小説って、閉ざされた空間で限られた人間達が閉じ込められ、その中で被害者が次々に出て、最後に探偵役が事件を解明するって言う感じのものだそうだ。最近の推理小説は、政治的であったり、財政界の闇であったり、警察とか、雑誌記者とかが解決したりで、こう言うのは本格では無いようだ。私にはどうでも良いが、解説を読むと、世の推理小説家はその辺を明確にしたい様だ。

今回のは、大学の推理小説研究サークルの仲のいい七人が、いわく付きの孤島に合宿の様な余暇を過ごしに行き、事件が起こるもの。解説にもあったが、そして誰もいなくなった、をオマージュしている。孤島と、そこに行かなかったサークル関係の人達が交互に描かれ、過去と言っても数ヶ月前の事件の究明が進んで行くと並行して、孤島で次々に殺人が起こっていく、結構スルスル読め、結果を早く知りたくなる本だった。

孤島に行った仲間達のニックネームが外国の推理小説作家の名前であったり、要所要所に、文字の横に点をふって強調させたり(これが結構あった感あり)、興味深かった。

3/20 夏物語 完読

帯に村上春樹さんの高評価のコメントがあったので購入。特に村上春樹さんが好きって訳ではなく、それよりも村上春樹さんの本を読んだことがないのだが。

650ページの長編で長いなぁと思ったけど、結果的に良かった。二部構成で、主人公は変わらず、一部と二部の間に数年の隔たりがあり、主人公の心情を語る上では一部は大切だったのかもしれないが、私には、その心情の繋がりがよく分からなかった。ただ、二部の内容だけで、何箇所か心にグサグサきたり、改めて考えさせられたりしたので、二部だけでもこの本は成り立つのでは無いかと思った。

小学生の頃、DVの父親から母と姉と夜逃げした売れない女性小説家が主人公で、精神的に、自分は子供を持つことができないと思い込んでいた所、AIDと言う、子供ができない夫婦の為に、違う男性の精子で人工授精させて子供を産む事に関心を持ち始め、徐々にまだ見ぬ自分の子供に会いたい気持ちが大きくなっていき、姉や知人との意見の違いや、自分の中での希望と現実の狭間でのこれでもかと言うぐらいの葛藤を描いている小説。

この中では、AIDで産まれて育てられた人の事も書いてあり、父親が本当の父親でなかったことがわかった時のいきどおりなど、自分では想像したことが無い位のマイナス感情を持つ事など、大変理解でき、腑に落ちた。種が解らなくても、育ててくれた父親に感謝するだけで良いのではと甘い考えを持っていた。猛反省。

それと、結婚しなくても子供は欲しいと言っている女性に対して、なにを調子の良いことを、なんて今まで思っていたが、精神的、肉体的に性行為ができない人もいて、それが故に結婚などとても考えられない人も居るんだなと、これまた猛反省。想像力の欠除なんだろう。

子供を持つことに対しての色んな立場の人たちの心情が人が産まれる事、人を産む事、人を産みたくても産めない人、人を育てる事、産まれたくて産まれた訳では無いと思っている人、などいろんな方向性を持って話が進み、とても哲学的でもあった。

中でも、望んで子供を欲しがる人はいるが、望んで産まれたかった子供は居ない、て言うところ、そりゃそうだわって思うけど、意味が深い気がする。

反面、主人公が作家である事から、その時々の心情や情景がとても詩的であり叙情的であった。これはかったるくもあったが、心を揺さぶりもし、こういった緩急で感動させてくれているんだろう。この感情の表現は、町田康さんの「告白」、河内十人斬りの小説となんか似たところを感じた。

主人公と友人の会話で、関西弁で小説を書かないのか、って言うくだりで、文字にすると、ひらがな表記が多くなったり、イントネーションまでは伝わらないので、ダメか、ってあっのだが、主人公が電話口で感情を露わにするシーンで、それこそ関西弁でひらがなが多かったのだが、イントネーションも言葉の間も音の強弱も全てが伝わった所があり、ボロボロ涙がこぼれてきた。作者の力量だと思う。

3/7 ボダ子 完読

ボダ子とは主人公の娘の事で、境界性人格障害ボーダーからのニックネーム。大震災後のボランティアの中でそう呼ばれており、本人も気に入っているとか。

この小説は、爾来小説って作者が言っているが、爾来=その後とかそれ以来という意味なのだが、爾来小説の意味がよくわからない。

100%事実の小説なのだそうだ。

そういう意味では、この主人公、物凄く仕事のできる人でかなりの才能のある人。ただ、物凄く運に恵まれなかった人。だからこそ、この様な小説にもなれたのだから、良いのか悪いのか判断が難しい。

後書きに載っていたけど、本当は、若い時仕事に成功して、悠々自適だった人が、娘の障害の対応でつまづいて、震災復興の事業と家庭の間で悪戦苦闘する様を描きたかったのだが、編集者等の意見で改稿につぐ改稿で、結局ボダ子を中心にまとまったとの事。

でも読んでいて、正直なところボダ子の事は

現象でしか現れてこず、主人公の事業者としてのスーパーさと、家庭を顧みないのに娘に執着している事、女性に対する変態性が極端な事、が描かれている本だと感じだ。

正直、描かれている事が一方的な真実でないとして、本当に、ボランティアを利用した悪質な輩にボダ子が利用されているのなら、そいつらに対して大いなる怒りを感じ、ボダ子はどうなったのだろうと言うモヤモヤ感が残った。合わせて、薄幸の愛人は?鎌倉の正妻は?ボダ子の母は?結局主人公が関わってきた女性たちが放ったらかしにされてただけでなんのケジメも付いていない、なんともスッキリしない本であった。

よくよく考えてみたら、主人公の被災地復興でかかわった会社も、談合やらピンハネやらが普通に蔓延っている世界で、強者が弱者を牛耳っているのだが、ボランティアの悪質野郎と同じ穴のムジナで、そんな世の中は、今までもこれからも無くならないんだろうなぁ。

2/27 出身成分 完読

高校事変を読んだ時に、巻末の解説のところに、この出身成分のことが書いてあり、北朝鮮脱北者からヒアリングしたもので、なんか凄い、みたいな事がかいてあったので気になっていた本。

この内容が真実であれば、こんな状態でよく国が保たれているなぁと感心する。「出身成分」ってどういう意味か全く知らなかったのだが、日本の江戸時代の士農工商穢多非人の様な身分制度の事であり、この現代において、まだこの様な制度が維持されているとは、思いもよらなかった。まぁ、インドのカーストも最近ようやく改善されている様ではあるけれど。

普通の階級の主人公が、過去の殺人、強姦事件の真実を追っていき、最終的に事実は解るのだが、そこには出身成分が嫌というほど絡んでおり、主人公が家族や親や無実の他人のいずれかを底辺まで落としてしまう決断を迫られ苦悩していく様を描いている。

結末に向けて、事実が二転三転して、最後はそうなるのか!と思わせる内容。さすが松岡さん。

下層階級の生活を読んでいると、「弥勒」で出てきたクーデター後の生活みたいでいたたまれなかった。

主人公と上官が、北朝鮮生活様式と、例えば日本の様な民主国家との違いをやりとりしたくだりは、広い意味で、日本も富裕層の人達に飼い慣らされているんだろうなとおもわされた。要するに、資本主義も共産主義社会主義どんな様式でも、人の幸せの基準の範囲が決まっており、所詮は、大半の国民は為政者にうまい具合に踊らされているのだろう。

2/19  歪んだ波紋 完読

アカラシア治療のpoem手術で入院の際、病院で購入。ちょっとしかない小説の中で一番面白そうだったのでチョイス。結局、入院中は1ページも読まなかったが。

メディアのフェイクニュース、メイクニュースに関しての小説で、結局のところ、こんなまがいものの情報は世の中にはびこっており、何を信じていいのか分からなくなっていて、世に流れている情報を鵜呑みにするな、自分で確認せよ、と発信している本。

5章に別れており、それぞれ主人公が変わって、色んな虚偽情報に関わったり、追求したりして、オムニバスかいって感じながらも、それぞれの章の人物が知り合いであったり、振り返ってりして、一本筋は通っている様に感じた。

自分には、メディアの内容ということもあり、とっつきにくい言葉が出てきて正直内容を把握できてはいないのだが、虚偽情報が飛び交っていること、それをやらなければならなくなっている世の中になっていること、誰も止めることができないこと、が良くわかった。

国会なんか見てても、それが罷り通っているし、一般庶民はそれを正したくてもなすすべを知らないし、いっとき経てば忘れてしまうし、権力者のなすがままになっている社会なんだと実感してしまう。

たまたまかどうか、この本を読んでいる時のテレビはフェイクニュースのことを取り扱っているものが多かった様な気がする。今流行りなのか。

2/8   木曜日の子ども 完読

前半はどうなっていくんだろうとかなりひきつけられたが、終盤で失速した感じ。もう少しミステリアスでサスペンス感が欲い。

7年前に中学校で毒薬を使った殺人が起き、犯人はすぐ捕まって解決、その7年後、中学生の子どものいる女性と結婚した男(主人公)がその中学校のある街に引っ越しし、そこで事件が起きていく。主人公は理想の家族をつくりたく、色々悩むのであるが、考えすぎだろって思う事が要所要所にあり、ちょっとしんどい所もあった。毒薬の名前がワルキューレって、ワルキューレは毒薬の名前にも使われてたんだ。知らなかった。後半の失速感は哲学的なところが多く判りづらいからかも知れない。