2022年10月31日〜11月1日 鉛温泉紀行

四日市でお世話になった上司のお誘いで、岩手は花巻に温泉旅行に出かけた。1.5日の有給。

10/31は、どうしても外せない会議が11時からあり、午前中は12時終了で1210分の電車に乗らねばならず、会議終了後フライングして急いで支度して会社を離れ何とか間に合った。

東北新幹線で新花巻まで。当日指定席を予約して座っていけたのだが、指定席はほぼ満員だった。月曜の昼でこんなに北に行く人居るんだとビックリ。北上していく間、地図とか見てると、一泊でとんぼ返りするのはもったいないくらい行きたい所が通り過ぎていく。水曜日も外せない会議あり、休みが取れなかった、残念。

新花巻到着後は、上司が車で来て待っていてくれて、そこからは上司の立ててくれたプラン通りに行動。

1番の目的、温泉。事前に聞いていてネットでも調べてはいたが、サイコーの温泉であった。

花巻温泉の中の一つ、鉛温泉。なんと鉛。どんな温泉じゃいと期待大。鉛温泉とうたっているのはこの藤三(ふじさん)旅館のみ。売りは白猿の湯。ネット情報で、掛け流し、深い、立って浸かる事は知っていた。でも写真や言葉ではわからない見事な温泉だった。

旅館の方が部屋の案内がてらここが白猿の湯ですと言われた扉が、一昔前の一杯飲み屋を思わすような古びた引き戸。それだけでも中はどんなんだろうと想像が膨らむ。夕食後にその門を開けた。目の前には、だだっ広い空間の中足元から石造の真っ直ぐな下り階段、20段。右斜め下の部屋中央に湯船3m×5mの楕円形、石造り。忍野八海を思わす湯の透明度、底にはゴツゴツの岩が4m上方からも見てとれる。目を水平に移すと、右斜め前にもこちらと同じ階段があり、対角線状でシンメトリーになっていて、湯船を舞台とした劇場に来たみたい。目線を上に上げると、どんだけ贅沢なのか、45mの高さはあろうか、天井が遠い。つまり、湯船の面から天井まで10m近く、何もない空間。閉ざされた空間なのに、何という解放感。扉を開いた瞬間に感嘆の声が出た。階段を降って行くとまるで舞台に向かう俳優になったのかと錯覚する雰囲気。階下はそのまま脱衣所となっていて、簡単な棚とあみかごがあるだけ、湯船からも丸見え。ここの湯では身体を石鹸等で洗うことができないので、湯船から風呂桶で湯をとり掛け湯をして入浴となる。さて重要なのはお湯。箱根や草津の様なはっきりした硫黄臭もなく、色も前述の通り、忍野八海ばりの透明度、見た目には何の効用も無さそうな綺麗な湯にしか見えないのだが、入ってびっくり、絡みつく絡みつく、熱海の様なまとわりつく様なぬめり感とは違う、サラサラなのにスベスベというか、フワッとした層を一枚纏った様な感じ、こりゃぁ身体にいいわ、って納得できるお湯であった。白猿の湯の由来は、昔白猿が傷をこの湯で癒していたのが始まりとか。猿でも解る湯の良さなんだろう。加えて、水深1.2mほど、深い所では身長172cmの私が立って肩が浸かる感じで手すりとかもなく、小学生は多分入れないし、女性もつま先立たないと溺れてしまうのではというぐらいの深さ。流石に縁周りは段差を設けるべく岩の出っぱりがあり、ちょっとした腰掛けにもなるが、基本立っての湯浴みである。平日だったのでほぼ貸切状態でこれもまた良かった。この白猿の湯は混浴なのである種の期待もしていたのであるが、女性専用時間もあることもあるが、女性どころか男性も数人しか合わなかった。旅館には結構人も居たのに。日帰りもやっているとの事だが、10人も入ればいっぱいになって、大渋滞するんじゃないかと要らぬ心配が浮かんでくる。旅館の人に聞くとお客同士でうまくやっているとか。

この宿には白猿の湯の他に、3つの風呂があって、当然お湯は白猿の湯と同じで掛け流し、その内の一つは内湯が一つと露天が二つの所があり、特に露天の一つは川のすぐそばにあり景観が良い。特に夜は景観は想像になるが、せせらぎが心地よい。他二つは内湯で特筆は無し。

食事は高いコースでの予約で、これもまた豪華。肉、魚、野菜と盛り沢山。惜しむらくは、内線の電話が無く、お酒の追加注文はかなり離れたロビーまで行かなくてはならず、とても不便。逆にあまりお酒を頼まなくなるので、健康的と言えば健康的である。

ところで、この宿の値段であるが、これだけ豪華な食事付きで、一人9千円弱。かなりリーズナブル。というのも理由があり。元々ここは湯治の宿であり、宿泊する場所が湯治部と宿泊部に分かれていて、湯治部の方の部屋は綺麗ではあるがすこぶる古い。畳の上を歩くと部屋全体が揺れ、窓が振動するくらい。部屋にはトイレ、洗面所は無い。布団は自分で敷く。湯治するところだから、キャンプ場を思わせる炊事場がありそこで自炊もできる様になっている。使っている人は全くみなかったが。そんな部屋なのでリーズナブルなのだろう。私は部屋のグレードとか気にしない方で、どっちかというとこんな感じの部屋の方が落ち着くので、ぐっすり休むことができた。

さて次の日、早く起きて朝風呂、もちろん白猿の湯、に二度浸かり、朝食。朝食も結構ボリュームあり大満足。チェックアウト前まで時間があったので、さらにもう一風呂。満喫、満喫。

この日は上司の車でドライブに。11月という季節で岩手県とくれば紅葉。花巻温泉のもう一つのエリア、瀬川の上流の釜淵の滝に行き少し早い紅葉で目を癒した。ここにある吊り橋が壊れそうでちょっとしたサスペンスを味わった。

その後、コーヒーを飲もうという事で喫茶店を探すも空いている所がなく、断念し、駅の反対側、東側にある新しくできた宮沢賢治の広場に行き見学。二人とも宮沢賢治をよく知らず、へーって感じでただ歩いた。賢治好きにはたまんないとこだってのだろう。近くに山猫軒という喫茶店を見つけたのでようやくコーヒーにたどり着けた。ここも何気なく入ったのだが、賢治好きにはたまんない所の様だった。どっち方面かよくわからなかったけど、ここからの眺めはとてもよかった。

この日の昼食だが、上司の考えていた蕎麦屋が臨時休業だったので、ソフトクリームで有名なマルカンビルのレストランに行くことにした。マルカンビルってよく知らなかったが、元々デパートだったビルで、店舗は皆なくなっているのだが、6階のレストランは市民の要望でずっと残って営業している、結構有名な所だった。レストランも昔ながらの感じで、入場する時に食券を購入して、黒服白エプロンのウェートレスさんが、食券をとりにくるやつで、懐かしい感じがした。残してくれっていうのもうなづける。このタイプのレストランはここしか無いのでは無いだろうか。

さて、ぼちぼち帰り支度、お土産のことまで考えてくれていて、リンゴの美味しい所があるとの事で向かった先がここもお休み、運が悪かった。でも別な所で三個百円で売っている農園に行ってお土産購入。

後は新花巻のキヨスクでお菓子を買って一路関東へと向かったのであった。

色々おもてなしをして頂いた上司に感謝感謝。