11/22 ことり 完読

裏表紙のあらすじ読んで興味を引いて購入。小鳥の言葉しかわからない兄を持ち、その兄の言葉を唯一理解できる小父さん(おじさん)の生涯の話。

小鳥の言葉と書いたが、実際は兄独自の言葉で小説上では、ポーポー語と言っており、小鳥を見ることが大好きと言うか、生活そのものだったので、あたかも小鳥と会話している様に聞こえていたのだろう。この兄は、言葉もそうであるが、行動にしても、庭に来る小鳥の餌をやる事、毎週水曜日に飴を買いに薬局に行く事、近所の幼稚園にある鳥小屋を見に行く事、貯まった飴の包装紙で小鳥のブローチを作る事、架空の旅行をする事、など、限られた事を規則正しく行い、その決まった行動以外の事が起きると、非常に不安定になる人であった。つまり、小鳥の小父さんが居ないと、まともな生活ができない人だった。そんな兄でも、小鳥の小父さんは尊敬していて、通訳だけでなく、生活の面倒含めて、全てにおいて、それが自分の為すべきことの様に、兄をフォローして生きていた。そんな中、兄の死を迎え、一人になってから、新しい出会いがあったり、事件があったり、鳥小屋が無くなったり、勤め先から暇を貰ったり、小鳥を助けたり等々、様々な事が起きるのだが、大きな変化が苦手なため、第一線を踏み切れず、我関せずで生きて行くのである。
どちらかと言えば、社会から外れていた人達ではあるが、ありのままをそのまま受け止めるといったような、こんな素朴な生き方こそ、今の人は忘れ去っているのでは無いかと思う。


11/13 死者と言葉を交わすなかれ 完読

京大生が100%騙されたと言う帯に吊られて購入。探偵が巻き込まれた事件を解決する小説なのだが、その探偵の名前が変わっててまずそこに惹かれた。主人公は「不狼煙」と書いて「のろさず」、探偵助手でワトソン役、その上司の探偵は「箒山」と書いて「ほうきやま」。二人とも女性。ネットで検索してみると箒山は地名にもあるし一般的な様だが、不狼煙はヒットしなかった。中盤まで、何で読むんだっけと前をめくってしまった。

さて、物語。この二人が浮気調査で追いかけていたターゲットが、車の中で心臓麻痺で死んだ。仕掛けていた盗聴器には、確実に誰かと会話している様子だけど、相手の声が一切入ってなく、丁度その会話していた場所が亡くなった妹の墓地で、その妹との会話の様である。かつ、そっちの世界とかと言った言葉も多分に入っており、多分にオカルト的な状況。この真相を突き詰めて解明して行くと言う物。
真相を解明して行く様は、何のことやらと思いながら読んでいたが、真相を知りたいために、ツルツル読んでいった。そう言う意味では面白いし、まだ半分くらいページが残っているのにほぼ解決してしまって、この後どんな展開するんだろうという期待感もあり、面白さが更に増していった。落ちでは、えーとはなったが、結構楽しめた。また、この本のテーマでもある死後の世界感にも惹かれた。このくだりの哲学は私には斬新でとてもおもしろかった。かなり突飛な考え方ではあるが、なるほどと頷いていた。
死んだら無になる、無になったら今まで生きてた事も無になるので、何のために生きているのだろう、とか、死ぬということは自分が居ない世界の、別な世界に存在するという事で、死ぬと言うことはないんだと言う考え方とか、深いところまでは理解できないものの、何か腑に落ちるところがあった。

11/8 ウツボカズラの甘い息 完読

久し振りに推理小説読みたくなって購入。

500ページ程度あり、結構読むのに日がかかるだろうとと思ったのだが、次から次に先を知りたくなってツルツル読んでしまった。結構面白い。
精神的に病んでいる専業主婦が友人からの誘いで、忘れていた自分磨きを再開して見事に変身を遂げ、そこから事件に巻き込まれて行くと言うストーリー。この主婦の外見的にも内面的にも変わって行く様が、この後どうなるのだろうと思わせるように、事件を追っている刑事達の進行と並行して書かれているので、とにかく先を知りたくなってしまった。結末はふーんと言う感じではあったが、そこまでの展開が、嘘だろと思うぐらい、意外なことがつづくので読み物としては良くできていると思った。
主役の専業主婦はどうなったんだろうとか、追っている刑事の家庭事情はあんまり必要なかったのではとか、疑問は残っているけど。
解説が松井玲奈だったのにはビックリした。

11/4 高校事変 Ⅸ 完読

今年入院してⅤ、Ⅵ、退院してⅦ、Ⅷと読んで早Ⅸを読んでしまった。何度も何度も書くが、こんなにも早いタイミングでシリーズ物って書き上げられる物なのかなぁ。最近の事情も要所要所に出てくるので、書き溜めているとも思えないし。 ただ、今回はコロナの話は出てこず、医者がベトナムに行ったりしているので、最近の事情はちょっと置いといたみたいではあったが。 そう言えば、ベトナムに行った医者と姉の話はどうなったのだろうか。兄の話とともに、Ⅹに持ち越しかな。 今回は、宿敵勇治との最終対決。場所は因縁の武蔵小杉高校。どの様な対決になるか楽しみではあったが、ちょっと拍子抜けした感じはあり。 それでも、ジェットコースター並のスピード感があり、一気に読み上げてしまった。勇治と結衣の一進一退の攻防は手に汗握る物がある。 今回は、元担任の教師がキーになって進んでいくのだが、学校での教育とはどこまで責任を持たなければならないのか、特に、凶悪な生徒に対して、どの様に対応しなくてはならないのか等、問題提起が投げられている様に感じた。 勇治との対決も完了したので、これまでかなと思っていたが、次は兄との対決に進んでいく様だ。どこまで凄い発想なのだろうか。

11/1 映画の日 パピチャ未来へのランウェイ 鑑賞

なんの気なしに選んだ映画。パピチャってなんだろう。人名だと思ってたけど違ってた。後で調べたら、「愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性」と言う意味の俗語だそうだ。確かにこの通りの女性達が主人公なのだが、凄まじい映画だった。

当時のアルジェリアの情勢はよくわからないが、とにかく女性は肌を隠して、家に居て家事をする者といった、女性差別が普通にはびこっている状況。
そんな中、ファッションに長けている学生が自由に生きようとする話。アルジェリアで本当にあった出来事を題材にして作ったとの事。
よくある話だと、そんな体制の中で良くやったね、で完結するのだが、この映画はちょっと衝撃的だった。撮影の仕方、暗転と無音をうまく使っているのだが、2カ所、「嘘だろ!」と叫んで、その後、数秒間目が皿のようになり瞬きできないシーンがあった。感動して泣くわけでも無く、ジーンとするでも無くただ事実を目の当たりにした時、こうなるのだろう。
それでも、前を向いて生きていこうとする人達にある意味力をもらえた気がする。

11/1 教師はあきらめない 完読

ある高等学校での組合員と管理者の闘いの記録の本。著者が知り合いなので購入。知り合いと言っても年賀状のやり取りプラスアルファ程度の接点しかないのだが、こんな厳しい闘いをしていた事を殆ど知らなかった。差別を受けているとは朧げながら知ってたはいたが、これ程とは。

今時、こんな差別がまだ有るのかと思うぐらい、古典的なパワハラ。組合に入っているだけで、担任を外したり、担当教科を外したり。ここの校長は馬鹿なんじゃないかと思ってしまった。裁判で負け、謝罪文まで書いたのに、まだ報復しているなんて。こんな人が校長やっている学校がよく続いているなぁと感心してしまう。もっと言うと、作者に怒られるかも知れないが、こんなアホな校長になんで勝てないのだろうとまで思ってしまった。それに、こんな大っぴらに闘争している学校に入学してくる生徒、親はどんな感覚なんだろうか。この本の中だけだと、事情を抱えている生徒たちが多い様に思えるので、そういった生徒たちに特化した学校なのかもしれないが。
この本の中に書かれている生徒達の何と感受性の強い事。学校生活では色々振り回されてしまったけど、先生達の闘いを見て、肌で感じて、たくましい人に成長している姿が目に浮かぶ。是非そうであって欲しい。
ただ、何百人もいる生徒の中で、全てがそうでは無いと思うのだが、その生徒達には、先生方の闘いはどう映って居たのだろうか。もし、我関せずとした気持ちであったら、闘い自体が迷惑であったのでは無いのだろうか。だとしたら、生徒達を思っての闘いが本末転倒になってはしまいか、と考えてしまう。当事者の方々はもちろんそんな事も重々議論しての闘いだろうと思うが、そこまではこの本ではわからなかった。
無知なるが故の疑問。組合が3つあるとのことだが、一つになったらもっと力が発揮できるのでは?新任の先生方も、低賃金とか不安定な契約期間とか、苦しめられているのに、なぜ組合に入らないのだろうか?管理者以外の先生方が全員組合員だったら、校長もそんなに権威を振りかざさないのでは無いだろうか?
この本を読んでて思ったのだが、校長を含め、「組合」と言う言葉アレルギーなのではないだろうか。資本経済主義の元では、組合はマイナスイメージにしか聞こえず、まずは構えてしまうのではないだろうか。「組合」と言う言葉を別なものに変えて活動すれば、若い人達も闘いに参加し易くなるのでは、なんても考えてしまった。
後半の国語の授業。こんな授業を受けていたら、自分の今も大いに変わっていたのではないかと思うぐらい素晴らしいと感じた。こうやって書いていても、文章力の無さ、語彙のなさ、感情表現の乏しさが身に染みているのだが、この授業を受けていたら、もっと違う表現ができていただろうに。
本の構成だが、テーマごとの章分けではなく、時系列的に流れていった方が、解りやすく感動しやすいのではないかと思った。
ても、先生方の頑張りで生徒達が変わっていく様は学園ドラマを見ている様で、かつ、先生達の闘いは半沢直樹ばりの権力者に対する鉄槌を見ている様であつた。
がんばれ、三木さん。

10/8 プチ ハッピー

最寄駅を歩いていたら、気になるポスターが目に入った。どこかで見た風景の絵、写真でなく絵。そう私の故郷。JRが出している、「旅に出よう!日本を楽しもう!」と言うポスター。

そのポスターには、地名などいっさい書いていない。旅する日本を代表する場所に我が故郷が選択されている、なんと誇らしいことか。
このポスターに気づいた時、プチハッピーな気持ちになった、と言う話。
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