5/4 黒鉄の志士たち 読了

幕末から明治にかけての佐賀藩の話。鍋島正直の偉業を同藩の砲術家、本島何某を中心とした物語。

直正が先進的な大名だったことを初めて知った。幕末明治では、薩摩、長州、土佐などが必ず挙げられるが、佐賀藩の事は知らなかった。若い頃に外国船に乗った時に、鎖国している日本の技術の無さを痛感し、幕府の法度に触れない様に、藩を挙げて革新を勧めたのが、直正。特に任されていた出島近郊の防衛線に必要とされる大砲の製造、設置において、大量の製鉄が必要とかんじ、まだ日本でどこも手掛けていない反射炉の建設をはじめる。それも、たったひとつだけある外国の図面のみを頼りに、その解読から始めるのである。何度も壁に衝突しては、苦難を乗り越え乗り越えし、苦心してやっと出来上がったと思ったら、対諸外国の為に作った大砲が官軍と幕府の内乱に使われたり、維新を迎え大砲の用途が少なくなり、反射炉も必要なくなっていく。そんなやるせなさが克明に描かれている。

世の中の進歩に技術革新の速度が追いついてかないのは、現代も同じで、技術者や開発者の苦労は今も昔も変わんない。けど、進歩の上では必要な苦労なのだ、と言うことがよく描かれていた。

今後、AIとかもっと進むと、べき乗的に技術革新が進んで、じきにターミネーターの世界やマトリックスの世界が現実になるんだろうな。