8/8 カラスの親指 読了

ある詐欺師が、同じ様な境遇の人達と出会い、その仲間達といっしょに、敵対する組織に対して詐欺の大勝負に出ると言う話。こう書くととてつもなくつまんなそうだが、さにあらず。

このパーティーの面々、皆んな悪徳金融業者のせいで家庭を失い、落ちぶれていった先が、詐欺師であったり泥棒であったり、スリであったりするのだが、それぞれの生い立ちを簡潔に丁寧に書かれていて、そのどれもがその辺にありそうな、想像できる範囲の内容で経験なくても理解しやすいもので、それだけでも、悪徳金融ってこう言うことするのかと勉強にもなった。

主人公の周りに人が集まってくるのだが、もので^物語的で、普通な感じで読んでいくのだが、最後に大どんでん返しで、そう来たか、って感心してしまった。よくよく考えると、前半の要所要所でその布石、ここでこんな描写いるの?とか、が置かれていたことに気付かされて、やられたっとも思った。

道尾さんの小説以前にも読んだことがあり、もっとシリアスなイメージがあったのだが、この小説はなんか登場人物たちが、犯罪働いているのに憎めなかったり、過去に悲惨な目に遭っているのに陽気な感じがしたりした。違い人が書いている様にも感じた。アナグラム的な所は同じだなとも思った。前回は各章の末尾をとると「花鳥風月」ってなっていたのに気づかなかったが、今回登場人物がアナグラムの事を語っているのに、要所要所にあるアナグラムに全く気づかなかった。これもやられたって思った。

「手の指」の言い回し、この話は周知のことなのかどうなのかわからないが、面白かった。この内容が道尾さんが考えた事だったら天才だと思う。

以下ネタバレ。



今まで小説読んできて、主人公が最終的に失敗して終わったのは始めてで、意外だった。それでいてスッキリもするのだからなおさらである。