1/14 風神の手 完読

作者の名前が「道尾さん」と故郷尾道の名前に似ていたという事だけで購入。背表紙でも4つの物語が最後に集約するって書いてあったのでどの程度のものかも知りたくなったのもの購入理由の一つ。それぞれの章の題名が、「心中花」「口笛鳥」「無常風(つねなきかぜ)」「待宵月(まつよいのつき)」と何となくおしゃれな所も気を引いた理由。

結果、大変面白かった。
「心中花」は、なんかノスタルジックな切なさを帯びた、女子高生の恋愛話、「口笛鳥」は小学生の冒険譚、「無常風」は会社絡みの犯罪の事件解決までの探偵物話、「待宵月」はエピローグ、と3章まではそれぞれの章で完結すればできる、短編の様ではあるが、西取川での火振漁という鮎漁の有名な街の中で、遺影専門の写真館を中心に、3世代に渡る物語で繋がっている。どの章も建設業者が川に消石灰を流すという事故又は犯罪に絡んでいるのだが、それぞれが別の事件で起承転結していながらも、ミステリー性を帯びており、3章目の「無常風」で全てが明確になっていく。その上で、犯罪があり、事件も起きるのだが、警察や刑事や探偵が出てくる捕物帳ではなく、加害者を糾弾するでもなく、関わった人たちがなぜかホンワリした物で包まれていく感じの小説であった。良きにしろ悪しきにせよ、全ての現象が今に繋がっている事を伝えたかったのだろう。
最後まで読んで解せないのが、題名。何で「風神の手」なんだろう。小説内に「風はどこからふいてくるのだろうか」という疑問が投げられており、今の状況が過去からの風によって成り立っている奇跡の様なものだから、なのだろうか。
解説読んで初めて気づいたのだが、各章の題名の語尾を繋げると、花鳥風月になっている。各章の題名がおしゃれだったというのは、この隠しアイテムがあったからかも。でも最後まで気づかなかったのは悔しい。