10/11 春、死なん 完読

「春、死なん」と「ははばなれ」の2作品の本。前者は妻を亡くした高齢者の話で、後者は少々変わった母の様にはなりたく無い娘の話。

ネットで佐倉まなさんの小説が何かの賞にノミネートされた事を知り購入。前前作の「最低」は映画化もされてはいるが賞を取るほどとは感じなくて、前作の「凹凸」は私が読解力が無い為かよく理解できなかったので、今回は凄く文章力が上がったんだろうと期待して読んだ。
「ははばなれ」は内容もよくわかり、娘の苦悩が後半になるにつれわかる様になって行くので、ストーリー展開もなるほどと思ったが、前2作と同様、佐倉まな節と言って良いのか、形容が独特で首を捻る所もあったりして、今一歩と言う感じがした。
が、「春、死なん」は良くできている上に、感動もした。佐倉まなさんの特徴を十分活かしつつ、原因不明の病気と言う謎を最後まで引っ張って最終的に溜飲させ、尚且つ、西行の歌を盛りこんで、妻を亡くした高齢者の思いを綴りつつ、亡くなった妻の思いまで、佐倉まな節を要所に散りばめ、簡潔に纏まっていた。私も主人公の歳まではまだ少し有るが、一人になった時、いかに歳をとるべきかなど、考えさせられるものがあった。読んでいる途中、佐倉まなさんが書いたものと言う事を通り越して、小説の中身に没頭していた。読み終わった後、まだ20代の女性がこんな高齢者の思いを書けるとは、凄いと心から思った。ただ、惜しいのは、題名に西行の歌を使ったのなら、最後の最後にこの歌に絡めた何かで幕を閉じて欲しかった。
少々褒めすぎかもしれないが正直な感想。