5/19 子宮の記憶 完読


産まれてすぐに数ヶ月間誘拐された経験を持つ高校生の話。成長していくに連れ母親との反りが合わず、それが元で父親ともうまくいっていない環境で、ひょんな事から喧嘩をして家出して、自分を誘拐した人に会いに行って、色んな事を経験していくのであるが、その様が、考えられないくらい凄まじい。歯医者の家なのでお金には困ってない、どちらかと言えば裕福な家庭であるがためか、母親はプライドが高く、子供に対して自分の考えを押し付けるタイプで、それが募って、完全拒否状態。父親は、よくある家庭を顧みない人で、当然ながら、不倫しており、その不倫相手は息子とも男女の関係があり、息子は父親の不倫相手と知っている。息子は、モヒカンで髪をカラフルに染めて、とても一見では近づきたくないタイプの外観なのだが、裕福な家庭であったためか、頭が非常に良く、処世術も長けており、高校生とは思えないくらい、人が考えている事を先読みし、常に冷静に物事を考えられるタイプ。
その高校生が、家を出る前の喧嘩がすさまじい。まずは、母親に対して口論のすえ、揉み合いになるのだが、計算の上で母親の乳を揉んで、更には、親の表には出せないへそくりの二百万円を顔色変えず持ち出す始末。その足で、父親の病院に行って、愛人と自分の関係を暴露した上で、揃えたばかりの医療器具をめちゃくちゃに壊してでていくのだ。
そんな、青年が、誘拐犯と一緒に生活していたらどうなっていただろうと言う単純な思いで、犯人の現状を調べ上げて実際にその犯人と同じ屋根の下で暮らし始める。
そこで出会った人たちもまた、かなり苦労していきたひとたちばかりで、それぞれの生き様が、主人公である青年を少し変えていくといった物語。
題名からして、なんか下衆な感じがして、読もうとは思わない様な本だと感じていたが、裏表紙の物語に、誘拐された子供が、自分を誘拐した人を探すと書いてあったので、題名はともかく、八日目の蝉を思い出し、感動物と判断して手にしてみた。読み始めは、かったるく失敗したかと思ったが、後半からの展開がとてもスピーディで、どうなっていくのだろうと、次から次へとページをめくっていた。良く考えると、子宮とは母親のことを指していて、胸のすく様な結末は無いのだけれど、生みの親と育ての親の違いとか、とても考えさせられた。
後半になろるに連れ、これ舞台にできるのでは、と思いながら読んでいたのだが、案の定、映画化されていた。