2/23 BUTTER 完読

週刊誌の女性記者が、殺人の罪で留置所にいる女性のインタビューを週刊誌に載せようとするも、その女性の生き様に翻弄され、自分だけでなく友人までも巻き込み、壊れてしまうのだが、自力で立ち直っていくと言うお話。

この女性記者は、仕事一点張りで、数人の友達はいるも、家庭的な事を一切しない人で、片や留置所の女性は、見た目はパッとしないのだが、男を魅了して、その男達を自殺や事故で死んでいき、殺人の疑いがかかり起訴されていると言う人。その魅了の手段が料理といういう事で、女性記者は少しでも留置所の女性の心情に近づくため、言われるがままに、自分で料理を行い、少しづつその魅力の虜になっていき、留置所の女性の手のひらで転がされていく。それを助けようとした友人も、留置所の女性の餌食になり、精神を病んでいく。何となく羊達の沈黙を思い出した。このコントロールされた二人には、過去、親との関係で心の片隅に傷を持っているので、容易にコントロールされていく事は理解できるが、留置所の女性も、女性記者を助ける男性も過去に家族との絆で傷を負っているので、あまりに同じような境遇の人が集まりすぎる感はあった。

料理がキーになっているため、調理の表現や食べている時の表現が見事で、全く料理をしない自分でも、なんか作ってみたくなった。

女性特有なのか、自分があまりにも知慮が足りないのかはわからないが、人と会話をしている時とか、料理を作っている時とか、こんなにもいろんな事を考えている物なのかと感じた。この思考が一般的な物ならば、自分の人生、何も考えてなかったんだなと今更ながら反省する。

2/14 ルポ 川崎 完読

パラパラとめくったら、刺青の人の写真やら、ヤバそうな顔の人の写真やらが出ていて、自分の知らない川崎が書いているのだろうと思い購入。しかも新刊本。

基本的には、43回の殺意での内容とほぼ一緒だったが、そんな中でヒップホップで成功した人たちを中心に書かれている本。
正直、ヒップホップの事はよくわからず、その名前も基本的に横文字で、しかも本的に縦に英字を記載しているので大変わかりづらかった。
川崎には35年ぐらい前から居るが、来たばっかりの頃は、川崎駅はまだ古いままで、駅前はアゼリアの工事中で、京急線の高架の先には右からさいか屋、モアーズ、コミヤなる商業ビルが立ち、大都会に見えもしたが、とにかく黒く薄暗く曇ったイメージしかなかった。イメージだけで無く、来た当初は南側は危ないから行くなと言われるぐらいダークな街であったのは確かだと思う。怖くて確認してないが。
が、アゼリアができ駅が新しくなりチネチッタができラゾーナができ、駅前が見る間に近代的になるにつれ、そう言ったダークな世界も無くなった気がしてたのだが、ずっと残ってたなんて、全く知らなかった、と言うか知ろうともしなかった。
良くも悪くも、外国人、母子家庭、仕事にあぶれた人達の住みやすい所だったのは確かだが、その代償として、いわれの無い力関係で成り立っている社会、当然犯罪もあり、暴力団有りの縦社会で抜けようと思っても抜けられない世界が、今も、続いているとは。
そんな中で、ラップとかスケボーや格闘技で名が売れた人たちが過去を振り返りながら、今の自分や、これからどうしていくかなどを語っている。前向きなものがあったり、変わりようが無い事を語ったり。ヘイトスピーチとかと闘ったり、こんな川崎を変えようと思ったりしている人達は立派ではある。が、全員がそうでは無いが、彼等の成功の前の苦労時代の間、さらに虐げられてきた人達、カツアゲの対象になった子供達や、万引きされた被害者とか、いわれの無い暴力を受けた人とか、がいっぱいいるはずで、その人達のことは一つも触れていない。作者が音楽ライターだからかどうかは知らないが、さらにその先を問題視すべきだったのではと思う。そう言う意味では、43回の殺意はよく書かれていたと思う。
それと、成功した人達も、かなり犯罪を犯した経験を持っており、それが元となってラップなりダンスなりの魂に繋がっているみたいな事を書いてあるが、何となく、彼らを目指すしている子供達には犯罪を肯定している様にも読めてしまう感があり、これで良いのかと疑問に思ってしまった。いい芸術には犯罪が付き物みたいな感じ。逆に言うと、犯罪を犯さなければ、良い芸術は生まれないんじゃ無いかとも思ってしまう。
誰もそんな事は考えてないと思うけど、この本読んでそう感じた。

2/8 メディアの闇 完読

副題に「安倍官邸 vs.NHK」森友取材全真相 とあり、最近ルポにハマっているという事もあり、また、元NHK記者がNHKを辞めてまでも突き止めた真相を知りたくて、購入。

正直な感想。つまんなかった。どう読んでも著者の自慢話にしか聞こえず、もっと言うと、森友事件を餌にして俺はこんなに凄いんだぞって伝えたい本としか思えなかった。
確かに凄い人で、かなり苦労して真実を暴こうとしている姿には頭が下がるが、題名と全く一致しない。苦労して取材した真実をNHK上層部や官邸の力でねじ伏せられている事はわかるので、メディアの闇と言うのはなんとなくわかるが、おおかたの国民は既にそう思ってて、その事を、こんなに苦労して取材しているんだぞ、こんな凄い手法を使って裏をとっているんだぞって言っているだけ。
後どうしてもいただけなかったのが、二番機、三番機の表現。こう言った軍隊式の表現を通常使っているメディアって何なの?って思ってしまった。自分としては特に反戦主義でも無いし、好戦主義でもないけど、未だにこう言った言葉が飛び交っている社会じゃぁ、変わり様が無いよね。NHKだけじゃ無く、国会とか、ドラマとか観てても、実際に権力で揉み消してるものいっぱいあるんだろう。権力を持った事がない者のひがみかも。

2/4 ホワイトラビット 完読

伊坂幸太郎さんの本は2冊目。一昨年の今頃、マリアビートルを読んだ。今回は、新潮文庫の紅白本合戦で男性一位だったので購入。マリアビートルでは殺し屋達の攻防の話しで、今回は、誘拐、強盗、泥棒、立て籠もりの話しなのだが、これら犯罪者を、普通の一般の方のような表現で現す作家である事がわかった。やってる事は世間的にも人情的にも酷いことをやっているのに、何故か嫌悪感が湧いてこない。読んだ2冊が両方とも同じ様な感想なので、作者の根底にその様なコンセプトがあるんだろうなと感じた。

要所要所でユーゴーレミゼの事や、オリオン座の事が散りばめられており、ちょっとめんどくさいなぁと思い読んでいたのだが、これらも計算されての挿入であり、加えて立て籠もりの現場が仙台市内というのも考えがあった上での選択だと解説に書いてあった。思い返すと、さりげなく書かれている内容ではあるが、意味のある内容だと理解できた。読みが足りなかった。
罪の基準の事が書かれていて、何を持って罪とするのかとか、時代や場所などによっても罪の基準は違うものといった事が書いてあり、それがレミゼとも重なり成る程、と思ったりした。
そういえば、マリアビートルでも、何故殺人はいけないの?といった哲学的な問いかけがテーマだった事を思い出した。

映画 プラットフォーム 鑑賞

先日ZOOM見た時の宣伝予告で面白そうだったので鑑賞。

ど真ん中に10畳くらいの穴がある20畳くらいのコンクリート造りの留置所みたいな箱の中。穴から上下を覗くと、終わりが見えないくらいの階層があり、その穴と同じ大きさのプラットフォームが上下するのだが、そのプラットフォームには山程の食事が乗せられて上階から1階づつ降りてくる。各階層には2名づつの囚人の様な人がおり、その囚人達が、上階から順に、プラットフォームの食べ物を食べられるのだが、時間制限があったり、食べ物を保持していると、耐えられない暑さまたは寒さの室温になる仕掛けになっている。なので当然下層に行くほど食料は無くなる。ひと月に一度、階層の変更がるのだが、どういう基準で、どの階層に行くのかは不明。今は、上階に居るので食事はあるが、来月はかなりの下層となり、何も食べられなくなる事もある、そんな場所。入る人は、何か一つだけ持って入ってもいい事になっており、主人公はドンキホーテの本、同室の者は何でもキレるナイフ、その他、ペットの犬だったりロープだったり、様々。そこで何年か過ごせば許可証が貰えるのだが、それが何の許可証なのか全くわからず。そもそも、先には、囚人の様な人と書いたが、そこに居る人は犯罪者だけでなく、自ら希望して入った人とかもいて、何故、何の為にそこに居るかも全くわからない。プラットフォーム自体も、でかいコンクリートの直方体の塊なのだが
、どうやって上下させているのかも謎と言うか、未知の世界の話なのかとも思わせる。加えて、映画の初っ端は、超高級料理店の厨房で食事を作り、シェフがそれを吟味しているシーンで、映画の最中、何回かそんなシーンが出てくるのだが、どう関係しているのかも全くわからず。
後半は、主人公ともう一人が、食事を分配できるよう、上層から下層まで説得、脅し、殺戮しながらプラットフォームに乗って降りて行き、最下層で真理めいた事に行き着いている様な感じなのだが、何の説明も解説も無く、エンドロールが始まる。エンドロール中、何だったんだ、と言うクエッションマークが頭の中で、無数に飛び交っていた。
勝手に解釈すると、人間のエゴと社会性を問うた内容になっているのだろうが、そう解釈しても、クエッションマークは消えない映画であった。
ただ、面白くなかったのかと言えばそうでも無く、そういう意味では、凄い映画だったのだろう。

1/30 ペスト カミュ 完読

ペストでロックダウンした街の様子を書いている小説。コロナ禍で、全世界がロックダウン状態になったからか、本屋のランキングでずっと上位だったので購入。

正直、読むのに疲れた。翻訳者のせいなのか、原作がそうなのか、私の読書力のせいなのか、とにかく、形容する言葉や文、あるいは情景が多すぎる。必要なことだけを伝えるのであれば多分半分ぐらいのページですむのではないかと思われるぐらい。
それでも、頑張って読むと、考えさせられる事が多かった。
今現在、コロナで、やれ緊急事態宣言出すだの出さないだの、延長するだのしないだの言って、あまり危機感が無いのは、この小説でも同じ様な事が書いてあり、ペストによる死者がある程度増えないまでは、今の日本と同じ様なやんわりとした対応をする様だ。この本は戦後すぐに書かれた物らしいので、7、80年前なのだが、確かに医療技術や制度は雲泥の差で今の方がより良くなっているとはいえ、対応が一緒。本当に困るまで、ほとんどの人が危機感持たないんだろうなぁ。自分も含めてだけど。
この本の中で、神の在り方だとか、聖者になる為には神は必要なのかとか、人の技術で抗いきれない物に対峙した時の宗教感は興味深かった。
この小説内では、私の読み間違いかもしれないが、最終的に神は無力であった。でもこの場合、まだ神父も居れば、医者も居て、少し余裕のある状態だからではないかと思う。昨年読んだ、「弥勒」という本で理解した事であるが、何かにすがるしか無くなった時、心底すがるものが必要となった時、それが神なのか仏なのか何でもいいのだが、生じてくる物が、宗教だと自分は確信している。
解説も読んだが、先に読んどけばよかったと思った。この本は何度か読まないと理解が難しいとの事。確かに、その通りだと思った。ペストに対峙する人、享受する人、逃げようとする人、利用する人達の心情や行動、気持ちの移り変わりがペスト蔓延から収束に向けて、入れ替わり立ち替わり記されている。その内、対峙している人の中に意識的に対を成した書き方をしている様で、その事には一切気がつかなかった。初見でこの事に気づいた人は凄いと思う。
とにかく、南海ではあったが、考えさせる本であった。

1/23 映画 ZOOM 鑑賞 

23日はいつもいく映画館の日で1500円なので、良さそうなのがあったら観るつもりで行ってみた。最近は、アニメと日本映画が多く、なかなか観たいものが無いのだが、時間がちょうど良くて、外国映画で、少しでも触手が動けば、観ることにしている。

そんな中で目に止まったのがZOOM。
何の前情報もなく選んだ後で、何となくホラー映画と知った。ロックダウンの最中、退屈している友人達がオンラインのビデオチャットであるZOOMを使って、交霊をしている最中の出来事の話。
終始、スクリーン内はPC画面に映っている映像のみ。7〜8人のチャットなので、PC画面は1〜8画面が都度切り替わりながらの展開で少々忙しくもあり、誰が喋っているのか追い付けないところもあり、チャットに慣れてない人にはちょっと厳しいかもと思った。
はじめの方は、何気ない仲間内の会話だけなのだが、それだけでもPC画面だけに映ったものの怖さを思い知らされた。例えば、当然顔が大写しなのであるが画面端っこにドアがあったり、カーテンが揺れたり、変な音が聞こえたりするだけで、何かが起こりそうなそんな感じがする。そう思わせるように創っているのであれば凄い監督だと思った。
恐怖度で言えば、だんだんと怖さが増して行く感じで、正直、最後の方では、くるぞ、くるぞと解っていながら、思わず絵に描いた様な「ウワー」という大声が出てしまった。その声で他のお客さんが引いただろうなと思うくらいの声で。
全体的には、パラノーマルアクティビティみたいな感じがした。また、日本のドラマで似た様なのがあった様な気がする。
時間的にも1時間ちょっとで、ある意味ストレス解消もできたので満足した映画であった。